2024.09.28
不動産

バリアフリーのためのマンション選び・リノベーション注意点

高齢者の家族と同居しているなどの理由でバリアフリーリフォーム・リノベーションを考える方も多いことでしょう。

高齢化社会となった現在、要介護や障害のある家族のため、また、将来介護が必要になったときに備えて、バリアフリーの住まい作りを考える家庭が多いようです。
中古マンションのリノベーションはその選択肢の一つといえます。

リノベーションとは、既存の建物の機能や価値を向上させる大がかりな改修工事のこと。
マンションの場合、いったん占有部分の全ての内装や設備を撤去し、リノベーション工事をします。注文建築のような感覚で、施主の希望や目的にあわせた設計ができるので、好みの内装や間取りのバリアフリーマンションを作ることができるのです。

とはいえ、リノベーションによるバリアフリーマンション作りを成功させるにはいくつか注意したいことがあります。
まず、重要となるのがマンション選び。マンションには、バリアフリーリノベーションに向く物件とそうではない物件があるのです。
そこで、今回は、バリアフリーリノベーションのための物件選びと注意点についてお伝えします。

バリアフリーのためのマンション選びの注意点

バリアフリーリノベーションはマンション探しから始まります。バリアフリー化のためには、間取り変更や段差の解消が不可欠なので、そうした変更ができる構造なのか確認が必要です。さらに、専有部分だけでなく、エントランスをはじめ共用部分や周囲の環境のチェックも欠かせません。
バリアフリーリノベーションに向いたマンションかどうかのチェックポイントは次の通りです。

共用部分のチェックポイント

●介助者つきで車いすが乗れる広さのエレベーターがある。

●マンション前の歩道(または駐車場)からエントランス、エントランスからエレベーター、エレベーターから住戸まで段差なしで移動できる。

●エントランスのドアのタイプ:自動ドアなら問題ないが、手前や奥へ開閉するタイプだと車いすでの出入りがむずかしい。

●共用廊下は車いすで通れるだけのじゅうぶんな幅があるか。

構造と専有部分のチェックポイント

●住戸内の間仕切り壁は撤去できるかどうか。ラーメン構造なら、間仕切り壁を撤去して間取りを変更することが可能。

●水回り設備の移動が可能か。構造上は可能でも管理規約により制限しているマンションがあるので、チェックが必要。

●床下にじゅうぶんなスペースがあるか。古いマンションなどで、床下のスペースがあまりない場合は、水回りコーナーと廊下の間の段差が解消できないことも。

●室内とバルコニーの段差をなくすため、バルコニーの床の高さの変更は可能か。バルコニーは共用部分にあたるため、管理規約の確認が必要。

バリアフリーのリノベーションでできること

リノベーションでバリアフリーにするには、具体的にどのようなことができるのでしょうか?

またリノベーションではなく、簡易的なリフォームでもできることがあります。
リフォーム・リノベーション両方できるバリアフリー工事は次のようなものが挙げられます。

リフォームでもできるバリアフリー

●通路やトイレに手すりをつける
●スロープをつけて段差をなだらかにする
●滑りにくい床に張り替える
●ドアを開き戸から引き戸に変える

リノベーションだからできるバリアフリーの工事内容

リフォームではなく、家全体の間取りを大きく変えるリノベーションだからこそできるバリアフリーもあります。

リノベーションだからできる工事は次の通りです。

●家全体をバリアフリーにする
●間取りからバリアフリーにする

 

●家全体をバリアフリーにする

段差がまったくないフルフラットな家にするなど、家全体を見直すことができるのはリノベーションだからこそできるバリアフリー住宅です。

例えば、床の場合リノベーションでは床材を一度すべて剥がした上で新しく床をつくります。

その際、構造上高くなっている部分に合わせて家全体の床を上げることでフルフラットな家にすることができるのです。

特にお風呂は水勾配をつけるために築古の物件だと他の部屋よりも高くなっていることが多いのですが、リノベーションで玄関から高さを上げることで脱衣所とお風呂の間の段差をなくし、フルフラットにすることができます。

家の一部だけに工事するリフォームではなかなかここまでのバリアフリーは実現することは難しいことがほとんどです。

家全体を一度躯体だけにして、新しいものに変えていくリノベーションだからこそできるバリアフリーなのです。

●間取りからバリアフリーにする

壁を取り払い、間取りを大きく変更することができるリノベーションなら、間取りもバリアフリーにすることができます。

スケルトンリノベーションでは部屋を仕切る壁を壊し、新しい間取りに変えていきます。

そのため暮らす人に合わせた動線や、通路幅、壁やドアのあるなしを自由に変えることができるのです。

例えば、

◎廊下の幅を広くして車いすでも通りやすくする

◎スイッチの位置を低くして車いすでも使いやすくする

など、間取りや設計段階からバリアフリーを意識することで、家全体の暮らしやすさをアップすることが可能です。

通路幅や間取りは後からリフォームで変えたいと思っても、なかなか変えることが難しいところまでバリアフリーにできるのは、リノベーションならではと言えるでしょう。

バリアフリーリノベーションで大切なこと

中古マンションは物件数が多いとはいえ、希望の立地で以上の条件を全て満たすマンションを探すのはむずかしいかもしれません。このチェックリストはあくまで一般的なものです。障害ある方の障害の度合いや介護する人の負担、また家族としてのライフスタイルなどを考慮して、物件選びをしましょう。
例えば、駐車場からマンションのエントランスまで多少段差があっても、エントランス前に車回しがあれば、問題ない場合もあるでしょう。逆に、障害ある方が自分で車を運転するなら、住戸〜エントランスから駐車場までバリアフリーであることが必須です。

専有部分の工事についても、障害ある方の動きやすさや介護のしやすさ、ライフスタイルにあわせてフレキシブルに考えましょう。また、何を優先して、どこまでバリアフリーにしたいのか、施主としての要望をリノベーション業者にしっかりと伝えることも大事です。

バリアフリー工事のトラブルでよくあるのが、施主と業者の間の認識のズレによるもの。施主は「バリアフリー」は家中の全ての床の段差をなくすことと理解していたのに対し、業者はできるだけ段差をなくすと思っていた、といった事例です。
マンションによっては、構造や配管の関係から、完全に段差を解消することがむずかしい場合もあります。しかし、段差が残る箇所の使用頻度が低ければ、必要なときだけ可動式のスロープをつけるといったことも考えられます。

事前に、業者に構造のチェックをしてもらうことはもちろんですが、施主として、解消したい問題と要望を明確にしておきましょう。業者とよく相談しながら工事のプランニングを進めるようにしてくださいね。

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