中古マンションは、とくに築年数が古い物件を購入するときに気になるポイントですよね。購入直後に、もし建て替え工事が行われることになったら自分が負担する金額はいくらになるのか、工事は何年くらいかかるのか、など、購入者の不安要素は多くあると思います。
今回の記事では、マンションの建て替えの現状や仕組みについて解説します。中古マンション購入時に考えておきたいポイントも合わせてチェックしてみてください。
マンションの築年数で建て替えになる?
東京カンテイの調査によると、実際にマンションの建て替えが実施されたタイミングは、全国平均で築40年。2014年の調査では築33.4年でしたので、長期化しています。
一方、RC造建築の寿命は、所説ありますが国土交通省の報告書「中古住宅流通促進・活用に関する研究会」報告書(2013年)によれば、およそ120年。メンテンナンスにより150年まで延命できるということです。
なぜこれほどに大きな差があるのかというと、一つには「建て替えが成功しやすいのは、それによって利益が見込める場合である」という事情があります。建て替えによって高額販売が見込めるために、中にはまだ充分使用に耐えうるマンションを壊した例もあったのです。
二つ目の理由は、「黎明期のマンションは、現代よりもメンテナンス性が悪かった」こと。
建物構造それ自体は充分使用に耐えうる状態であっても、キッチンや浴室といった水廻りの給排水管は(当時、一般的だったメッキ鋼管の場合)30年程度で劣化が進み、つまりや水漏れが起こりやすくなります。
ところが、当時のRC造マンションの多くがこの配管をコンクリートに埋め込んでしまっており、交換が困難でした。
そのため給排水管の寿命とともに、建物ごと建て替えざるを得なかったのです。
先ほどの「中古住宅流通促進・活用に関する研究会|報告書でも紹介されている、早稲田大学 小松幸夫教授の調査(2013年)」によれば、RC系住宅の平均寿命は68年。
この調査は建物が実際に在続した年数「残存率が50%になる年数)を追ったもので、私たちの実感に比較的近いものといえるのではないでしょうか。
実際、近年話題となった築古マンションの建て替え事例では、「日本最古の分譲マンション」宮益坂ビルディングは築63年、「日本初の民間分譲マンション」四谷コーポラスは築61年で建て替えが決まっています。
しかし現在は、配管交換が容易な設計が普及しており、当時のマンションに比べ、建て替えを考えるべきタイミングはより長期化していると考えられます。海外に目を向けると、築100年以上の石造りの建物がいまだ建て替えられず、修繕を繰り返しながら現役の住宅として活躍しているケースも珍しくありません。
マンションの住宅としての寿命、つまり住居可能な状態を保てる期間は、メンテナンスによって大きく変わります。
部屋の中、つまり専有部分の内装や設備機器が古くなって壊れたときは、リフォームやリノベーションで回復できます。
建物の外壁塗装の剥がれや、屋上やバルコニーの防水切れ、堅管とよばれる各お部屋をつなぐ給排水管のつまりや老朽化といった共用部分の維持管理は、管理組合の主導で行われます。
適切なメンテナンスによって建物の寿命は最大化できますが、マンションの維持管理には、長期的な修繕計画と充分な修繕資金が必要不可欠です。
中古マンションを購入する際には、この二点がどのように運用されているかをよくチェックすることが大切です。
実際に建て替えになった件数はごく少数
現在、マンションの建て替えはほとんど実施されていません。国土交通省の発表によれば2021年4月1日時点で、建て替え準備中および実施中のマンションは40件。
これまでに工事完了したマンションを見ても263件と、建て替え事例は非常に少ないことが分かります。
一方、全国のマンションのストック戸数は2020末時点で675.3万戸超。1棟当たり60戸で計算しても、マンションの棟数は全国で約11.2万棟です。
つまり、マンションの建て替え事例は、全体の0.27%程度となります。
出典:国土交通省「マンション建替えの実施状況 令和3年4月1日現在」
(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk5_000058.html)
建て替えの費用
マンションを建て替えることになった場合、建物の解体や建築費用のほか、仮住まいの家賃や引越し費用といった諸々の費用がかかります。
建物の解体費用は、一坪5~8万円(1.5~2.4万円)60㎡で90~216万円が目安です。
建築費用は坪あたり100万円(30万円/㎡)とすると、60㎡で1,800万円。
これに引っ越し費用を加えれば、総額で2,000万円程度になります。
マンションの建て替えがほとんど実施されないのは、高額な建築負担金がおもな原因です。
一般的に、建て替え負担金は通常の60㎡の分譲マンションで1,000万円~2,000万円程度
国によって建て替え補助制度や融資制度もありますが、依然として住人が大きな負担を担うことに変わりありません。
また、マンションの建て替え決議を可決するには「区分所有法」の法律に基づき、住んでいる世帯(区分所有者)の4/5以上の賛成が必要となります。
そのため、反対意見が多い場合、住民の支持を得られず保留や廃案になるケースが多いのです。
これまで建て替えられたマンションの多くは、物件の戸数を増やし、それらの分譲費用で建て替え費用をまかなうという方法で行われています。
それでも建て替えの負担を負えない場合は、マンション管理組合に買取請求をして持ち分を買い取ってもらいマンションを出ることになります。
建て替えの流れ
マンションの建て替えは管理組合が検討するところから始まります。
築年数が40年~50年~と経過し、そろそろ建て替えを考えるべき時が来たらマンション再生専門指名
の建て替えを検討する専門家などに相談し、建物の劣化状況や修繕に必要な費用などを調査するところから始まります。
建物の状態を確認したうえで、建て替えが必要なのか、大規模修繕や設備の更新によって長く使い続けられるのかを比較検討します。
建て替えを進める方針となった場合は、建て替えにかかる費用や資金計画、住民それぞれの負担、建て替え後の住戸の条件などを具体的に検討していきます。その後、区分所有者による建て替え決議などの必要な手続きを経て、計画が進められます。
ただし、建て替えの検討を始めてから実際に工事が完了するまでには、合意形成や計画の策定、行政手続き、工事など、多くの段階があります。建物の規模や住民の合意状況によっても異なりますが、長い年月がかかることも珍しくありません。
そのため、築年数が古いからといって、すぐに建て替えが行われるわけではありません。建物の状態だけでなく、住民の意向や費用面など、さまざまな条件が関係しています。
建て替えが決まったらどうなる?
実際にマンションの建て替えが決まった場合、現在の住民はどのような選択をすることになるのでしょうか。
基本的には、建て替えに参加して新しいマンションに住み続ける方法や、所有している住戸の権利を手放して転居する方法などが考えられます。
建て替えに参加する場合、現在のマンションの権利を新しいマンションの住戸などに移す「権利変換」という仕組みが利用されることがあります。ただし、現在の住戸と同じ広さや条件の住戸をそのまま取得できるとは限らず、建て替え後の住戸の条件や追加負担の有無は、事業計画によって異なります。
また、建て替え工事中は原則として現在の住戸に住み続けることができないため、仮住まいへの引っ越しが必要になります。仮住まいの家賃や引っ越し費用なども含め、長期的な資金計画を考えておくことが大切です。
一方、建て替えに参加せず転居する場合には、権利の買い取りや売却など、事業の仕組みに応じた手続きが必要になります。どのような選択肢があるのかは、建て替え計画の内容によって異なるため、事前に管理組合などに確認しておきましょう。
中古マンションを購入するときに確認したいポイント
ここまで、マンションの建て替えの現状や仕組みについて解説してきました。
築年数の古いマンションであっても、適切な維持管理が行われていれば、長く住み続けられる可能性があります。一方で、建物の状態や管理状況によっては、将来的に大規模な修繕や建て替えの検討が必要になることもあります。
では、中古マンションを購入するときには、どのような点を確認しておけばよいのでしょうか。
1. 長期修繕計画と修繕積立金
まず確認しておきたいのが、マンション全体の長期修繕計画と修繕積立金です。
マンションでは、外壁や屋上の防水、給排水管、エレベーターなど、建物全体の設備を維持するために定期的な修繕が必要になります。これらの費用は、区分所有者が毎月支払う修繕積立金などによってまかなわれます。
長期修繕計画が適切に作成されているか、計画に沿って修繕が実施されているか、修繕積立金が十分に確保されているかを確認しましょう。
修繕積立金が不足している場合、将来的に積立金の値上げや一時金の徴収が必要になる可能性もあります。現在の金額だけで判断せず、今後の負担についても把握しておくことが大切です。
2. これまでの修繕履歴と建物の状態
次に、これまでにどのような修繕が行われてきたのかを確認しましょう。
外壁や屋上の防水工事などの大規模修繕だけでなく、給排水管の更新やエレベーターの改修など、建物の安全性や暮らしやすさに関わる工事の履歴も重要です。
また、マンション全体の管理状況だけでなく、購入を検討している住戸の給排水管や設備の状態も確認しておきたいポイントです。
室内をリノベーションしてきれいに整えたとしても、共用部分の設備に問題があれば、将来的に追加の修繕費用が発生する可能性があります。
購入前には、管理会社や仲介会社を通じて修繕履歴や管理に関する資料を確認し、不明な点があれば質問しておくと安心です。
3. 管理組合の運営状況
マンションを長く維持していくためには、建物そのものだけでなく、管理組合が適切に運営されているかどうかも重要です。
例えば、管理費や修繕積立金の滞納が多くないか、管理組合の総会が適切に開催されているか、修繕や管理に関する問題が放置されていないかなどを確認しましょう。
また、築年数が古いマンションでは、所有者の高齢化や空室の増加などによって、管理組合の運営が難しくなるケースもあります。
マンションは複数の所有者が共同で維持管理していく建物です。将来にわたって適切な管理を続けられる体制が整っているかどうかも、購入判断の大切な要素になります。
4. 耐震性や建物の構造
築年数の古いマンションを検討する際には、耐震性についても確認しておきましょう。
特に確認したいのが、建築確認の時期です。一般的に、1981年6月1日以降に適用された新耐震基準と、それ以前の旧耐震基準では、耐震設計の考え方が異なります。
ただし、旧耐震基準のマンションだからといって、必ずしも耐震性に問題があるとは限りません。耐震診断の実施状況や診断結果、必要な補強工事の有無なども含めて判断することが大切です。
築年数だけで判断するのではなく、建物の構造やこれまでの維持管理の状況を総合的に確認しましょう。
まとめ|築年数だけでなく、マンションの管理状況を確認しよう
中古マンションの建て替えは、築年数だけで一律に決まるものではありません。建物の劣化状況や修繕の履歴、資金面、住民の合意など、さまざまな条件によって判断されます。
築年数が古いマンションであっても、適切な維持管理が行われていれば、長く住み続けられる可能性があります。一方で、管理状況によっては、購入後に修繕積立金の値上げや大規模な工事など、想定していなかった費用が発生することもあります。
中古マンションを購入する際は、価格や築年数、室内のきれいさだけで判断するのではなく、マンション全体の管理状況や将来の修繕計画まで確認することが大切です。
また、購入後に自分たちの暮らしに合わせてリノベーションを検討している場合は、室内の工事にかかる費用だけでなく、マンション全体の維持管理に関する費用も含めて資金計画を立てておくと安心です。
物件選びの段階から建物の状態や管理状況を把握し、将来の暮らしまで見据えた住まい選びをしていきましょう。
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