団体信用生命保険(以下、団信)への加入は、住宅ローンを組むにあたって必須としている銀行がほとんどです。
団信に加入するには、治療中の病気や過去の病歴を保険会社に知らせなくてはいけません。
健康状態が良くないと判断されてしまうと、団信に加入できず、住宅ローンが組めない可能性も出てきます。
この記事では、
●団信に加入する際、告知が必要な病気
●告知書の書き方
●健康状態にあった保険の選び方
●一般団信に入れない場合の対処方法
について解説します。
「団体信用生命保険」とは?
そもそも団体信用生命保険とは、どのような保険なのでしょうか。
団体信用生命保険、略して「団信」は生命保険の一種で、住宅ローン返済中にローン契約者が死亡または高度障害状態になったときに保険金が支払われ、ローンの残債を返済してくれるもの。
高度障害状態とは、失明や神経、臓器の障がいで介護が必要な状態、四肢の欠損など比較的重度な障害状態を指します。
一般的に住宅ローンは、その世帯の家計の収入を主に賄う方(世帯主)が契約者(債務者)となります。債務者の家族は、世帯主が死亡したり障害が原因で働けなくなっても、団信によって住宅ローンの支払いが全額行われるため、安心して引き続き自宅に住み続けることができます。
一方、金融機関側も、債務者が死亡した場合でも残債を回収できるメリットがあります。そのため、多くの金融機関では、住宅ローン契約時に団信の加入を必須としているのです。
告知事項の内容
生命保険に加入するには、健康状態を保険会社に『告知』しなくてはなりません。
団信においても通常の生命保険と同様、持病があったり健康リスクが高かったりする人は保険会社から加入を断られることがあります。つまり健康状態が悪いと、ローンを組む際の必要条件である団信に加入できず、借入ができない可能性もあるのです。
まずは、団信加入時に必要な告知事項の内容をチェックしてみましょう。つぎのA・B・Cのうちいずれかひとつでも該当する項目があれば、病名や症状、治療の経過、入院していた場合には入院期間、手術をした場合にはその時期、服用している薬があれば薬名と服用期間を、『告知書』に詳しく書かなくてはなりません。
夫婦でペアローンを組む場合、団信にはそれぞれ加入しますから、当然告知もそれぞれ行う必要があります。
A)過去3年以内に以下の病名で手術、または2週間以上の医師の治療・投薬を受けたことがある
●脳の疾患:脳卒中・脳動脈硬化症など
●心臓の疾患: 狭心症・心筋梗塞・心臓弁膜症・先天性心臓病・心筋症など
●胃腸の疾患:胃潰瘍・十二指腸潰瘍・潰瘍性大腸炎など
●肝臓・すい臓の疾患:肝炎・肝硬変・肝機能障害・すい炎など
●腎臓の疾患:腎炎・ネフローゼ、腎不全
●眼の疾患:緑内障・網膜にまつわる疾患・角膜にまつわる疾患
●精神疾患:うつ病・神経症・てんかん・アルコールや薬物依存症・認知症など
●代謝異常・免疫疾患:高血圧症・糖尿病・紫斑病など
●婦人科系の疾患:子宮内膜症・乳腺症・卵巣のう腫など
●呼吸器疾患の疾患:喘息・慢性気管支炎・肺結核・肺気腫など
●がん:がん・肉腫・白血病など
B)最近3ヶ月以内に、医師の治療・投薬を受けたことがある
C)手・足の欠損、または機能に障がいがある。もしくは背骨(脊柱)、視力、聴力、言語、そしゃく機能に障がいがある
告知書の書き方
告知書を記入する際は、抜けや漏れがないようにすることが大切です。具体的には、次のようなポイントに注意してください。
告知書の書き方のポイント
●告知義務のある病気は「過去3年分」を記入
●告知義務のない病気も「過去3ヶ月以内」を記入
●障がい者手帳がある場合は等級を記入
●診断書が必要な場合も
●ウソの告知は絶対にNG
告知義務のある病気は「過去3年分」を記入
加入時に告知が必要な3項目(前述のA~C)のうち、Aに該当する病気については、「過去3年以内に手術した」「2週間以上の治療を受けた」経験を漏れなく告知しなくてはいけません。
経過観察や定期的に検査しているだけであっても「2週間以上の治療」に該当します。
完治(あらゆる治療が終わり、再発の恐れがない状態)から4年以上が経過して初めて、記入する必要がなくなります。
告知義務のない病気も「過去3ヶ月以内」を記入
Aの一覧にない病気でも、「直近3ヶ月以内に医師の治療や投薬を受けた場合」はBに該当し、告知が必要です。
風邪をひいて病院に行った、アレルギー等で薬をもらっている、といった軽い病気・日常的な通院だからといって記入しないのはNGです。
障がい者手帳がある場合は等級を記入
Cに当てはまる方は、医師の治療の有無にかかわらず告知が必要です。
症状のほか、日常生活に支障があるか、今後症状が変わる見込みがあるかなどを記入します。
障害者手帳をお持ちの場合は、等級もあわせて記入します。
診断書が必要な場合も
保険会社から病状や治療状況を確認するため、医師の診断書を求められることがあります。その場合は、治療を受けた医師に住宅ローン審査に利用する旨を伝え、診断書を書いてもらいましょう。
また、がん保障、三大疾病保障などの特約を付ける場合、健康診断書の提出を求められることがあります。
告知義務違反は絶対にNG
もし告知事項に関わる病気を隠して、団信に加入したらどうなるのでしょうか?
結論からお伝えすると、虚偽の告知によって保険金が下りないリスクが発生します。
ローン契約者が亡くなり、保険金を請求するときには、医師による死亡診断書が必要です。死亡診断書には、死因や治療の履歴が記入されています。告知内容と異なっていれば、虚偽があったことはすぐわかってしまいます。
また保険会社も、健康保険の利用歴や通院歴などを詳しく調査します。加入から短期間で(2年以内)死亡したケースでは保険金も高額になることから、保険会社の調査もより詳細になります。
隠していた病気が発覚すれば告知義務違反とみなされたうえ、保険契約は解除になり、保険金はおりません。遺されたご家族がローンの残債を背負うことになります。保険金支払い後に虚偽告知が発覚すれば、商法上は契約から5年間は解除が可能であるため、返還を求められるかもしれません。
「不動産会社から、黙っていれば大丈夫と言われた」という人も見かけますが、その対価は非常に大きなリスクです。虚偽の告知は絶対に避けましょう。
持病がある人は「ワイド団信」という選択肢も
通常の団信だと加入が難しい持病のある人を対象に、加入条件を緩和したのが「ワイド団信」(加入条件緩和割増保険料適用特約付団体信用生命保険)です。
高血圧症、糖尿病、肝機能障害、心臓・脳疾患、うつ病などを患っていても加入できますが、告知は必要です。病状によっては、加入できない可能性もあります。
年齢制限は通常より狭く、上限は多くの保険会社で50歳となっています(※通常の団信は70歳前後)。
保険料も通常より高くなります。具体的な金額は銀行によって異なりますが、金利に0.3%前後が上乗せされるケースが多いです。この場合、通常の金利が1.3%だとすると、ワイド団信に加入した場合は1.6%程度になります。
団信なしで入れる住宅ローン
住宅ローンの種類によっては、団信に加入しなくても利用できるものもあります。その代表格が、住宅金融支援機構の固定金利ローン『フラット35』です。団信に加入しないで利用する場合は、団信付きより金利が0.2%低くなります。
一方で団信加入を希望する人に向けては、フラット35専用の団信(機構団信)があり、2017年10月からは三大疾病付きに介護保障がつくなど、より充実した保証内容になっています。
また民間の金融機関でも、団信加入を任意としているローン商品があります。健康状態に不安のある方は、こういったローンの利用を検討してみるのも良いでしょう。
さいごに
生命保険の一種である団信は、契約者と金融機関双方にメリットがあるものですが、告知事項にかかわる病気を隠したり、虚偽の告知を行ったりして団信に入ると、いざというときに保険金が受け取れなくなるリスクがあります。保険金を請求するときには、医師の診断書が必要なので、告知内容と異なっていれば虚偽はすぐ分かってしまうでしょう。
また保険会社も、健康保険の利用歴や通院歴などから詳しく調査します。加入から短期間(2年以内)で死亡したケースでは、保険金が高額になることから、保険会社の調査はより詳細になります。隠していた病気が発覚すれば、告知義務違反とみなされて保険契約は解除され、保険金はおりません。支払い後であっても虚偽告知が発覚した場合、商法上は契約から5年以内の解除が可能であるため、返還を求められる可能性もあります。
健康に不安のある方には、ワイド団信や、団信なしのローン(『フラット35』など)という選択肢があります。また配偶者に安定した収入がある場合には、配偶者をローン契約者とする方法もあります。住宅ローンを利用する際には、団信の虚偽告知は絶対に避け、自分の状況に応じた団信やローン商品を選ぶようにしましょう。
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