2023.11.18
不動産

契約不適合責任とは?中古マンションの買主と売主それぞれの注意点

中古マンションの売買契約後、もし物件に瑕疵や欠陥が見つかってしまった場合その保証はだれがどこまで負うのかについてご存じですか?

実は私人の権利や義務の関係性をまとめた民法に「契約不適合責任」として定められているのです。2020年4月に民法改正により、責任の範囲や性質、考え方が以前とは大きく変わりました。

この記事では、改正前の「瑕疵担保責任」と改正後の「契約不適合責任」の違いや、売主と買主それぞれが契約時に注意すべきポイントを回避するための対策について詳しく解説します。

これから中古マンションの購入を検討している方や、中古マンション購入に関して不安がある方はぜひ参考になさってください。

契約不適合責任とは

契約不適合責任」とは、モノの売買契約全般に用いられる決まりのこと。もちろん中古マンションの売買にも適用されます。

契約不適合とは、契約の目的を果たせない状態のことをいいます。例えば購入した家の雨漏りがひどく、そこに住めないような状態のことです。

モノの売主は買主に対し、契約の目的に敵うモノを引き渡す責任があります。売ったモノが壊れていたり不具合がある場合には、修繕や賠償といった保証の責任を負います。これが売主の契約不適合責任です。

買主の側から考えると、買ったモノに瑕疵や欠陥があり契約の目的を果たせないようなときには、売主に対して保証を求める権利があります。住宅のケースでは、欠陥箇所の修繕を求めたり、購入代金の減額や契約解除の請求が可能です。

ただしこの契約不適合責任は、あくまでも任意の規定。売主と買主・双方の合意によってその内容を変更したり、仮に契約不適合が見つかったとしても売主が契約不適合責任を負わないという内容の「免責特約」を付けることも可能です。

瑕疵担保責任との違い

2020年4月の民法改正以前、売主には「瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)」がありました。

「瑕疵」とは欠陥やキズ、トラブルという意味です。
「瑕疵担保責任」とは、モノに何らかの瑕疵があった場合に売主がその責任を負わなければならないという規定。「契約不適合責任」の前身となった規定です。

瑕疵担保責任では、売買された不動産に「通常では発見できないような瑕疵」があった場合に売主は損害賠償の責任を負う、とされていました。
瑕疵の程度が大きく、契約の目的が達成できないと判断されたときには、契約の解除をすることが可能、という決まりでした。

2020年4月の民法改正により、この瑕疵担保責任は契約不適合責任として、制度の整理・追加や内容のブラッシュアップがなされました。
この章では、従来の瑕疵担保責任と契約不適合責任の違いについて解説していきます。

1.「隠れた瑕疵」以外にも保証対象に

改正前の瑕疵担保責任では、その保証対象は「隠れた瑕疵」に限定されていました。
保証の範囲が買主が注意していても見逃してしまうような不具合や欠陥に限られていたということです。
物件の内覧の時によく見れば気づくであろう内装の汚れやフローリングのキズ、設備機器の経年劣化による故障等は「隠れた瑕疵」に含まれません。

そして中古マンションの売買では、現状の状態のまま引き渡すという意味の「現状有姿渡し」が原則でした。
したがっていくら現状に不具合や欠陥があってもそれが「隠れた瑕疵」とみなされない限りは、保証の対象から外れてしまうのが通常でした。

しかし民法改正後の契約不適合責任では「隠れた瑕疵」の要件が不要に。買主が知り得た故障や汚損があっても、契約書の内容に含まれていなければ、売主の修繕等の対応を求めることが可能となりました。

つまり「契約書に書かれているか、書かれていないか」がポイントになるた、売主・買主の双方にとって分かりやすい内容になったといえます。

2.修繕や代金減額の請求が可能に

改正前の瑕疵担保責任では、買主が売主に対して求めることのできる保証は、「損害賠償」と「契約解除」の二つのみでした。

しかし改正後の契約不適合責任では、損害賠償と契約(催告・無催告)解除のほかに、「売買代金の減額」や「追完の請求」も可能になりました。

「追完」とは、モノの修繕や補修のこと。例えば住宅を購入後に水道管が壊れていることが分かった場合は、売主に水道管の修理を求めることができるということです。
売主が追完請求に応じない場合は、次の一手として代金減額請求ができます。
この代金減額請求も、以前の瑕疵担保責任では売主への請求ができませんでした。

3.履行利益の損害賠償請求が可能に

改正前の瑕疵担保責任では、損害賠償の範囲は「本来は無効な契約を、有効と信じたために生じた損害(信頼利益)」に限定されていました。具体的には、契約準備のために使った費用(中古マンションの売買契約時の登記費用など)などがこれに該当します。

しかし改正後の契約不適合責任では、「契約通りのモノが引き渡されていれば得られたであろうはずの利益(履行利益)」も賠償の対象に。一例をあげると、店舗兼住宅として中古マンションを購入した場合、無事に売買が成立した後で得られたであろう店舗の営業利益についても、賠償を請求できる可能性があるということです。

4.1年以内に通知すれば請求はいつでも可能

改正前の瑕疵担保責任では、買主は瑕疵に気が付いてから1年以内に損害賠償請求権や契約解除権を行使する必要がありました。

しかし改正後の契約不適合責任では、1年以内に売主に対し「不都合がある」と通知さえすれば、実際に請求を行うのは1年以上経過した後でも大丈夫になりました。

ただし請求権の行使には「消滅時効」があり、請求できると知った時点から5年以内、または引き渡しから10年以内に具体的な請求を行わないと、請求することができなくなるので注意が必要です。

5.売主の過失のない不具合は保証責任の対象外に

上に挙げた1~4は買主が有利になる変更点ですが、こちらは売主が有利になる変更点です。

改善前の瑕疵担保責任では、売主の過失の有無にかかわらず「隠れた瑕疵」があれば売主が責任を負わなければなりませんでした。

一方の契約不適合責任では、売主に過失のない不具合は保証責任の対象外としています。

中古マンションの売買における注意点

さて、契約不適合責任の概要は整理できましたが、実際に中古マンションの売買においてはどんな点がポイントになるのでしょうか。
買主と売主、それぞれの注意点を確認していきましょう。

買主が注意すべきポイント

契約不適合によるトラブルが起こると、買主だけでなく売主にとっても大きな痛手となります。
築年の古い中古物件を売却する場合、経年劣化による欠陥が生じやすくなりますが、確認せずに契約してしまうケースも多くあります。
引き渡し後、欠陥が発見されるたびに補修費を請求されてしまうと売主側の負担が大きくなっていきます。

個人が売主の場合、補修や損害賠償をする資力がない可能性もあるため、売却する前に瑕疵がないか確認しておくことは大切です。

特約・容認事項を契約書に記入する

売主が建物の状態・設備の状況をきちんと理解したうえで、契約不適合責任の対象となる設備の保証できる容認事項を確認し、記入することが大切になります。また、築年数が経過している物件であれば、契約不適合責任の免責とすることも検討したほうがよいでしょう。

物理的瑕疵を把握する

売主が売却活動に入る前にインスペクションを実施しておくことで、物理的瑕疵を事前に把握し、不具合の箇所を契約書に反映させることができます。また、事前に修繕できるものは直しておくことも大切です。

さいごに

大切な住まいを売り買いするということは、契約したら・引き渡ししたら”終わり”というわけにはいきません。

売主は何千万円という代金を受け取る以上、引き渡す物件の品質には最低限の責任が求められます。他方で買主は中古マンションを購入する以上、ある程度のキズ・汚れ・古さは当たり前と考えて、内覧等で確認できることはしっかりと確認して、納得した上で契約を交わす。
お互いに責任を負うべき範囲をよく理解して契約にのぞむことが、のちのトラブルを防ぎます。

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